オランダの訪問看護『ビュートゾルフ』

皆さんこんにちは。今回はオランダ発の在宅介護システム、”ビュートゾルフ(Buurtzorg)”をご紹介したいと思います。

聞き慣れない言葉ですが、ビュートゾルフ(オランダ語で”地域ケア”)は今日本でも課題となっている看護師不足や離職問題の緩和につながる可能性があり、世界からも注目されている、10年で急成長した在宅ケア組織なんです!

今後日本でも広まっていくかもしれないこの組織はどんなものなのか、早速みていきましょう。

 

1.ビュートゾルフとは

Buurtzorg(ビュートゾルフ)とは、オランダの地域看護師 Jos de Blok(ヨス・デ・ブロック)氏が2006年に創業した非営利の在宅ケア組織です。このケアモデルが成功し、2016年時点で従業員数は9,000人、利用者(要介護者)の数は約7万人にもなりました。確かにこの短期間での成長も目を見張るものがありますが、注目されているのは実はそこではなく、「通常の在宅介護支援の半分のコストで実現している」という点がポイントになります。

ではなぜ半分のコストで運営できているのでしょうか。そのカギは誕生背景に深く関わりがありました。

2.誕生背景

もともと福祉国家として手厚い医療保険制度を国が行っていたオランダですが、1970年代に入ると経済状況が悪化。それをきっかけに医療費抑制に向けた規制緩和が始まりました。

1980年代までは少人数のチームが予防や看護、介護を行い、疾病を持った住民だけでなく、その家族の健康状態の把握も含めたケア、家庭医やリハビリ職、福祉団体などと連携することによる、地域に密着したトータルケアが存在していましたが、1990年代以降はケアが市場志向へと転換し、地域に寄り添っていた在宅ケア組織や福祉団体、病院などが統合され大規模化しました。それに伴い、ケアの成果・質ではなく、看護・介護・リハビリといった諸機能やサービスをどれだけ提供したかによる出来高払いが普及し、結果として利用者は断片的で継続性のないケアに対しての不満を、また、組織の一部として働かざるを得なくなった看護師をはじめとする専門職は、自律性とプロ意識を抱けない仕事に不満を募らせていき、ナースの離職も相次ぎました。

そこで、各チームに大きな裁量権があり、自立したチームにより機能別に分業することなくトータルケアを実践する、という考え方のビュートゾルフが誕生しました。分業を導入して細切れのケアを行えば、それだけ多くのスタッフが必要になり、連携の手間もかかりますが、分業せずにチームでケアを行うことは、コストの削減にも大きく貢献することになったのです。

 

3.特徴

ではそんなビュートゾルフはどんな特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

①少人数チームでのセルフマネジメント

まず第一に、最大12人の看護師・介護士でチーム編成し、チームごとにセルフマネジメントしながらサービスを提供していることがあげられます。メンバーの間にはリーダーやマネージャーなどの階層はなく、利用者への聞き取りからサービス提供まで全員が一貫して業務を行っています。定型サービスはなく、スタッフが利用者や家族の要望に応じ自由にサービスを決定する体制です。

また、サービスのみでなく勤怠やスケジュールなどもチームの裁量で決定。このように、働く側もサービスを受ける側も満足度の高い体制となっています。

その他、独自のITツールを活用し、継続して知識を得られるような体制があったり、チーム内のコミュニケーション、ケアプランの共有からシフト確認などもできる機能を備えており、時短と働きやすさをさらに後押ししています。

 

②地域包括システムでのサービス提供

次に、地域包括システムを利用してサービス提供を行っていることがあげられます。

オランダでは近隣に住むかかりつけ医と契約を結んでいるため、直接病院を受診しません。さらに、家族や友人、近隣住民が無償で介護する「マントルケア」も医療費抑制の観点から積極的に利用されています。

このことを背景に、ビュートゾルフでは1チームあたり50~60人程度の利用者の割り当てがありますが、チームメンバーは利用者の近隣に住むスタッフが選ばれます。

利用者と同じ地域に住むスタッフでチームを作ることで、利用者のことをよく知るかかりつけ医や薬剤師、家族など他の関係者と連携がとりやすくなっています。

 

4.日本におけるビュートゾルフ

ではビュートゾルフは日本で広まるのでしょうか。

日本には、どうしても医師や看護婦長といったピラミッド型の組織感覚があり、医療と介護の間にも越えられない壁があります。

利用者側も多額の利用料を支払っているため顧客意識が強いと思います。他にも行きつけの病院はあっても契約を結んでいるわけでもなく、セカンドオピニオンを聞きに別の病院へ行ったりすることもあるため、すぐにオランダのモデルを取り入れるのは厳しいと思います。

ですが、看護師は専門職。

オランダ同様、自分たちでマネジメントできることに魅力を感じる人も多いのではないでしょうか。

また、看護職は好きだけれど、管理業務は苦手という方にもフラットなチーム制はありがたいと思います。

日本の現状ですぐに広まっていくのは難しいですが、”この働き方しかない”でなく、ビュートゾルフのような働き方も選択できたら看護師たちの満足度は間違いなく上がります。

 

5.まとめ

今までは「オランダ」と言えば風車や自転車、チューリップなどを連想していましたが、これからはそこにビュートゾルフも加わっていくかもしれませんね。

日本とオランダは風土が違い、ビュートゾルフの導入は困難にも思えます。ですが、国民皆保険制度が導入されていたり、高齢化社会が進んでいるなど共通点も多いので、参考にすることで今後の訪問看護職は大きく変わっていくことでしょう。

「最後まで自分の住む社会で生活したい」と考える人がたくさんいる中、少しずつでも実現されることを期待しています。